「新築一戸建てが欲しいけど、都内では6,000万円~7,000万円台。もう手が出ない…」
「都心のマンションは1億超えらしい……絶対買えない」
住宅価格が高騰する今、そんなお悩みをお持ちの方も多いと思います。買わない選択をする方もいるでしょう。
そんな中、住宅市場で注目されるのは、比較的価格が安い「中古」へと移行しつつあります。
その流れを決定づけるのが、令和7年12月19日に公表された「令和8年度税制改正大綱」です。今回の改正案では、これまで新築住宅に偏っていた住宅ローン減税のウェイトを、中古住宅へも拡充する方針が示されました。
本記事では、令和8年4月1日の施行(予定)に向けた法案の内容をお届けします。
※この記事は「令和8年度税制改正大綱」に基づいて作成したものであり、法案は国会での審議を経て4月1日に施行されます。今後の情報にご留意ください。
なぜ今「中古住宅の支援拡充」なのか
都心の新築マンションは1億円超、新築一戸建ても7,000万円前後が当たり前になり、住宅購入を検討する30〜40代のファミリー層にとって、新築は簡単に選べる存在ではなくなっています。
こうした中で注目されているのが中古住宅です。価格を抑えやすいだけでなく、立地の選択肢が広がり、リフォームやリノベーションによって暮らしに合わせられる点が評価され、住宅市場の主役は徐々に「中古」へと移りつつあります。
今回の住宅ローン減税の改正では、これまで新築住宅に偏りがちだった制度を、中古住宅にも広げる方針が明確に示されました。
背景にあるのは、住宅を「新しく建て続ける」時代から、「良質な住宅を長く使う」時代への転換です。中古住宅であっても、一定の性能を満たせば支援の対象にすることで、新築と並ぶ選択肢として位置づけ直そうとしています。
今回の改正は、中古住宅を妥協案ではなく、合理的で現実的な選択肢として後押しする制度だと言えるでしょう。
令和8年度版住宅ローン減税の全体像
令和8年以降の住宅ローン減税の最大の特徴は、制度を大きく変えたというより、方向性をはっきりさせた点にあります。まずは全体像を整理しておきましょう。
《改正住宅ローン減税の基本ポイント》
- 適用期間:令和8年~令和12年入居分(予定)
- 控除率:年末ローン残高の 0.7%(全期間共通)
- 控除期間:原則 13年(一部住宅は 10年)
- 新築・中古ともに対象(住宅性能により区分される)
所得要件は、2,000万円を超えないことです。ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円を超えないこととされています。
令和7年までは新築住宅のみが対象だったこの要件は、令和8年からは中古住宅にも適用されることになります。
《新制度の考え方がわかる整理表》
| 項目 | 内容 |
| 控除率 | 0.7%(一律) |
| 評価軸 | 「新築か中古か」よりも「住宅性能」 |
| 重視される 性能 |
長期優良・低炭素・ZEH水準・省エネ基準 |
| 中古住宅 | 性能要件を満たせば、新築と同水準の扱いが可能 |
| 子育て・ 若者夫婦世帯※1 |
借入限度額が優遇 |
※1 子育て・若者夫婦世帯:個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者、又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者。
今回の改正では、築年数そのものは評価基準ではありません。 「どんな性能の住宅か」が、住宅ローン減税の借入限度額を左右します。 これまでの住宅ローン減税は、実質的に「新築優遇」の制度設計でした。 一方、令和8年以降は次のように整理されています。
- 新築・中古を同じ性能基準で評価
- 中古住宅でも長期優良住宅、ZEH水準省エネ住宅などであれば、高い借入限度額が設定される
- 中古住宅の中でも、特に買取再販住宅(既存住宅のうち宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われたもの)は、新築に近い扱いとなる
つまり、制度の軸足が「新しいかどうか」から「性能が確保されているか」へと移ったことが、この改正の本質です。
中古住宅への支援は何がどう変わったのか
令和8年度版の住宅ローン減税で最も注目すべき点は、中古住宅の評価が明確に引き上げられたことです。ここでは「何が」「どのように」変わるのかを整理します。
中古住宅の借入限度額が拡充
まず押さえておきたいのが、借入限度額の引き上げです。中古住宅でも、住宅性能によっては新築と同水準の扱いを受けられるようになります。
《中古住宅(既存住宅)の借入限度額(令和8年〜令和12年入居分)》
| 住宅の性能区分 | 子育て・若者夫婦世帯 | 左記以外の世帯 | 控除期間 |
| 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 2,000万円 | 13年 |
| その他の住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 | 10年 |
《中古住宅(買取再販住宅)の借入限度額(令和8年〜令和12年入居分)》
| 住宅の性能区分 | 子育て・若者夫婦世帯 | 左記以外の世帯 | 控除期間 |
| 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 2,000万円 | 13年 |
| その他の住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 | 10年 |
新築との違いは「性能次第」に
今回の改正で大きく変わるのは、「中古か新築か」ではなく「どんな性能の住宅か」が評価軸になる点です。
《新築と中古の考え方の変化》
| これまで | 令和8年以降 |
| 新築が有利 | 性能が高い住宅が有利 |
| 中古は控除額が小さい | 中古でも高性能なら高水準 |
| 築年数が重視されがち | 性能・基準適合を重視 |
特に、買取再販住宅は
- 性能が一定水準まで引き上げられている
- 新築に近い扱いを受ける
という点で、制度上の位置づけが大きく変わります。
新築住宅への支援
令和8度年版の住宅ローン減税では中古住宅への支援拡充が注目されていますが、新築住宅への支援がなくなるわけではありません。
むしろ今回の改正では、新築住宅についても「どのような住宅を支援するのか」という考え方が、より明確になっています。
今回の改正から読み取れるのは、「新築だから支援する」のではなく、「将来にわたって使われる質の高い住宅を支援する」という姿勢です。
- 高性能な新築住宅は、引き続き手厚く支援
- 基準を満たさない住宅は、支援の対象から外れる可能性もある
《新築※1 住宅の借入限度額(令和8年〜令和12年入居分)》
| 住宅の性能区分 | 子育て・若者夫婦世帯 | 左記以外の世帯 | 控除期間 |
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 (令和10年以降は支援対象外※2) |
3,000万円 | 2,000万円 | 13年 |
※1 令和10年入居分から、災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、 急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域及び浸水被害防止区域)の新築住宅は適用対象外。
※2 ただし、令和9年末までに建築確認を受けたもの等は2,000万円×10年
制度改正を踏まえた中古住宅の選び方
今回の改正では、中古住宅が制度的に後押しされる形になります。ただし、その恩恵を受けられるかどうかは、「中古住宅を選ぶ」だけでは決まりません。「どの中古住宅を選ぶか」が、これまで以上に重要になります。
①価格だけで選ばない
中古住宅を検討する際、どうしても目につきがちなのが価格です。しかし、今回の制度改正を踏まえると、価格だけで判断するのは得策とは言えません。
- 住宅性能によって借入限度額が変わる
- 控除期間が13年か10年かで総控除額に差が出る
一見安く見える物件でも、減税の対象が限定される場合があります。 「いくらで買えるか」だけでなく、「どの区分で減税を受けられるか」という視点を持つことも大切です。
②「性能が確認できる中古住宅」を選ぶ
制度上、評価されるのは築年数ではなく住宅性能です。そのため、中古住宅選びでは次の点が重要になります。
- 長期優良住宅や省エネ基準の認定・証明があるか
- 性能を示す書類(評価書・確認書類)が取得できるか
- リフォームや改修によって基準を満たせる可能性があるか
特に、買取再販住宅は性能が整備されているケースが多く、新築に近い制度の扱いを受けられる点で注目されています。
③リフォーム前提で考えるという選択
中古住宅は、購入時点で基準を満たしていなくても、リフォームによって評価区分を引き上げられる可能性があります。
- 断熱性能の向上
- 設備の省エネ化
- 耐久性・劣化対策
こうした改修を前提に資金計画を立てることで、住宅ローン減税と住まいの快適性・安全性の両立が図れます。
④「制度ありき」ではなく「暮らしありき」で考える
制度はあくまで判断材料のひとつです。減税額を最大化すること自体が目的になってしまうと、本来の住まい選びを見失いかねません。
- 立地
- 広さ
- 将来の家族構成
- メンテナンスのしやすさ
これらを踏まえたうえで、制度をどう活かすかを考えることが、後悔しない中古住宅選びにつながります。
申告手続きについて
住宅ローン減税を受ける1年目は、年末調整で控除を適用できないため、会社員でも確定申告が必要になります。手続き期間は、毎年2月16日から3月15日まで。ちなみに、確定申告を忘れたり手続きが間に合わなかったりしても、住宅ローン減税の適用を受けた年の翌年から5年間であれば、還付申告が可能です。
ただし、個人事業主で青色申告特別控除の適用を受ける場合は、還付申告でも期限内に確定申告をする必要があります。
もし個人事業主で住宅ローン減税の記載を忘れた場合は「更正の請求」を行うことで、正しい還付を受けられます。更正の請求の期限は、還付申告書を提出した日から5年以内です。申告を忘れたり手続きに誤りがあったりした場合は、税務署で相談しましょう。
まとめ~住宅ローン減税が示す住宅選びのこれから~
住宅ローン減税は、「どの住宅を選ぶべきか」を一方的に決める制度ではありません。しかし今回の改正では、これからの住まい選びで何を大切に考えてほしいかが、はっきり示されています。
新築か中古かという二択ではなく、立地や広さ、住宅の性能、将来の暮らし方まで含めて考えること。そして、その選択を後押しする仕組みとして、中古住宅も制度の中で正しく評価されるようになります。
価格が上がり続ける住宅市場の中で、住まい選びに迷うのは自然なことです。今回の制度改正は、「無理のない選択」をしやすくするための一つの判断材料だと言えるでしょう。
「この物件は住宅ローン減税の対象になるのか」
「中古でも、どの区分に当てはまるのか」
「新築と比べて、どちらが自分たちに合っているのか」
そうした疑問は、検討を進める中で生まれるものです。
朝日土地建物では、住宅ローン減税を含めた資金計画や、中古住宅選びのポイントについてもご相談を承っています。
「まだ検討段階だけれど話を聞いてみたい」
そんなタイミングでも構いません。
無理のない住まい選びのために、どうぞお気軽にご相談ください。
※この記事は「令和8年度税制改正大綱」に基づいて作成したものであり、法案は国会での審議を経て4月1日に施行されます。今後の情報にご留意ください。
国土交通省:住宅ローン減税等の住宅取得促進策に係る所要の措置