「家を買おう!」と決めて、いざ情報収集を始めると、目に入ってくるのはたくさんの物件広告。でも……。
「“建蔽率”や“容積率”って何?」
「“LDK”と”DK”の違いって何?」
「“徒歩10分”って、本当に10分なの?」
こんなふうに、不動産広告を見てもいまいちピンとこない…という方は、あなただけではありません。
今回は、初めて家を探す方に向けて「不動産広告には何が書いてあるのか」「どこに気をつければいいのか」を、項目ごとにやさしく解説します。知っておけば安心できること、知らないままでは誤解してしまいがちなことを、ひとつずつ丁寧にご紹介していきます。
情報の正しい見方を知ることで「なんとなく不安」だった家探しが、少しずつ現実的なものになるでしょう。あなたの理想の住まいに、一歩近づくきっかけになれば幸いです。
- 1 物件を探すには
- 2 広告できるタイミング
- 3 新築と中古の表示
- 4 物件写真、完成図、完成予定図
- 5 間取り
- 6 販売価格
- 7 交通の利便性
- 8 物件の所在地
- 9 土地面積と私道負担面積
- 10 販売区画数・総区画数、販売戸数・総戸数
- 11 建物面積(専有面積)
- 12 構造及び階数
- 13 バルコニー面積・専用庭面積(マンションの場合)
- 14 建築年月または入居予定年月(新築・中古一戸建て、マンション)
- 15 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
- 16 管理方式(マンションの場合)
- 17 建蔽率(土地の場合)
- 18 容積率(土地の場合)
- 19 地目(土地の場合)
- 20 用途地域(土地・新築一戸建て・新築マンション)
- 21 不利益になる事項、誤解の生じやすい事項の表示
- 22 まとめ
物件を探すには
物件情報を得るには、以下のような媒体があります。
①インターネット広告
②新聞折込チラシ
③新聞・雑誌広告
④パンフレット
この中で最も身近なのは、インターネット広告でしょう。インターネット広告は、不動産物件検索サイトや不動産会社のホームページから検索できます。スマートフォン向けのアプリも多数出ています。
不動産広告は、不動産の情報を消費者に誤解なく、正しく提供しなければなりません。そのため、不当な広告の表示を規制するためのルールを定めた「不動産取引における公正競争規約」があります。不動産会社はどの会社も、このルールに従って広告を行っています。
不動産会社がこの規制を守らず不当表示を行った場合は、行政処分を受けることになります。①~④にあげた媒体は、どれも表示規約にのっとって広告されています(例外として、店頭ビラや電車中吊り広告、現地看板など、規制がないものもあります)。
今回は、広告から得られる情報について、わかりやすく説明します。また、不当な表示についても説明します。広告の表示内容を理解し、自分の求める物件が選択できるようになりましょう。
広告できるタイミング
新築物件の場合は建築確認を受けた後、造成工事中の宅地の場合は開発許可を受けた後でなければ、広告ができません。建築・工事完了前の物件広告には、建築確認番号・開発許可番号を記載しなければならず、架空の番号を載せることは違反になります。
新築と中古の表示
広告で「新築」と表示できるのは「建築後1年未満、かつ未入居である」物件です。それ以外は、居住履歴がなくても1年が経過すれば中古扱いになります。
物件写真、完成図、完成予定図
土地や建物の写真は、実際取引するものを掲載しなければなりません。ただし、建築工事中で実際の写真が使えない場合は、その写真が他の物件のものであることを明示し、取引しようとする建物と規模、形質及び外観が同一である画像であれば掲載できます。
また、建物内部の写真も、写っている内容がその規模・形質が同様のものに限って使用できます。完成予定図は、その旨を明記して表示を行います。
間取り
間取りは、規約で使用基準が示されています。居室(寝室)数やリビングダイニングキッチンなどの部屋の状況を、3LDKなどと表します。3は洋室や和室などの部屋数です。LDKはL(リビング)D(ダイニング)K(キッチン)が併存する部屋でDKは、D(ダイニング)K(キッチン)が併存する部屋です。
DK、LDKについては、最低必要な広さが定められています。例えば、居室の数が2部屋で台所が5畳の場合、2DKとなり、2LDKとは表示できません。
居室(寝室)数 | DK | LDK |
1部屋 | 4.5畳 | 8畳 |
2部屋以上 | 6畳以上 | 10畳以上 |
間取図では部屋の畳数が記載されますが、1畳当たりの広さは各室の壁芯面積を1.62㎡で割った数です。京間、中京間、江戸間、団地サイズなどありますが、公正競争規約では1.62㎡を1畳としているので、これ以下だと1畳と表示できません。
また「納戸」とは、採光・換気のための窓等が建築基準法に適合しておらず、居室と認められないものを言います。納戸は、洋室・和室・書斎などと表示することはできません。
販売価格
土地には消費税がかかりません。
一戸建てのように物件が土地以外の建物を含む場合は、「税込」など消費税を含む価格を表示します。多区画の土地や複数(多棟)住戸の新築一戸建ての場合は、最低価格と最高価格を表示します。10以上の土地、住戸の場合は最多価格帯を表示します。
中古一戸建て・中古マンションの場合も、税抜きのことがあります。
例2:最多価格帯 2,800万円台(6棟)
交通の利便性
物件から最寄駅までの徒歩所要時間、あるいはバスおよびバス停までの所要時間を表示します。
徒歩の場合は、道路距離80メートルを1分として換算した時間が表示されます(1分未満の端数は1分に繰り上げ)。また、バスの時間はバス会社による所要時間(運行表)を記載します。信号待ちなどの時間は入りません。
例2:小田急線「町田」駅バス6分 バス停『鞍掛』停歩2分
物件の所在地
個人情報保護の観点から、マンション以外は〇丁目までの記載が多いです。
例(マンション):町田市中町1丁目〇-〇
土地面積と私道負担面積
土地面積は㎡数で表示します。1㎡未満の数値は切り捨てても良いですが、四捨五入はできません。尺貫法による間(けん)、坪のみを表示して取引に用いてはならないため、違反になります(㎡と併記はOK)。多区画、新築多棟物件の場合は最低㎡数、最高㎡数を記載し、水平投影面積で表示します。
私道負担面積は、私道として負担する面積がある場合、その旨を記載しなければなりません。購入する面積は、このぶん狭くなります。
販売区画数・総区画数、販売戸数・総戸数
開発区画内の土地の区画数、または建築を予定する住宅の戸数を、総区画(総戸数)として表示します。販売区画数と販売戸数は、販売しようとする区画数または戸数です。
例(分譲地):全11区画今回販売7区画
建物面積(専有面積)
建物の面積は延べ床面積を㎡数で表示し、その面積に車庫、地下車庫等の面積が含まれている場合は、その旨とその面積を表示します。
マンションの場合は壁芯面積(壁や柱の中心線を基準とする面積)で記載するので、登記面積は壁芯面積より少なくなります。ただし中古マンションでは、建物登記簿に記載された面積を表示することもできます。これは壁の内側の面積なので、壁芯面積のように壁の厚みは含みません。
例(マンション):専有面積 78.04㎡(壁芯)
構造及び階数
建物構造と何階建ての建物であるか、マンションの場合は物件のある階数を表示します。建物構造は木造、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)と表示されます。
例(マンション):RC造地下1階地上10階建ての8階
バルコニー面積・専用庭面積(マンションの場合)
バルコニーの面積を表示します。両面バルコニー等複数バルコニーがある場合は、合計値を表示します。専用庭等がある場合は、面積と共に使用料も記載されます。
建築年月または入居予定年月(新築・中古一戸建て、マンション)
建物が完成済みなら建築年月を、未完成なら完成予定の年月、入居できる予定年月を表示します。
例(新築住宅):令和7年12月入居予定
管理費・修繕積立金(マンションの場合)
管理費は、敷地や建物の維持管理費用です。修繕積立金は、共有部分などの長期計画的に修繕を行うための費用です。各々1ヶ月あたりの費用を表示します。
管理方式(マンションの場合)
マンションの管理人の勤務形態を表示します。自主管理、日勤、常駐、巡回の種別が表示されます。
建蔽率(土地の場合)
建蔽率とは敷地面積に対する建築面積の割合で、住環境と防火上から守るべき基準が定められています。建蔽率が50%であれば、100㎡の敷地では50㎡以上の建築面積は取れません。容積率も含めて、希望する建物が建てられるか検討しましょう。
容積率(土地の場合)
容積率とは、建物の敷地面積に対する延べ床面積の割合です。容積率が150%であるとして、他の建築基準の制約がなければ、床面積50㎡の3階建ての住居が建てられます。
地目(土地の場合)
地目は田、畑、宅地、山林など、宅地造成以前の土地の利用状況を知ることができます。
用途地域(土地・新築一戸建て・新築マンション)
用途地域は、市街化区域内の土地の使い道を定めたもので、建築できる建物が制限されています。
一戸建てを買ったけれど、後から隣に人の出入りや騒音がひどい商業施設が建ち、陽当たりが悪くなってしまった、などという悲惨な目にあわないために、住宅の属する用途地域や周辺の用途地域の確認が重要です。
用途地域は住居、商業、工業地域に分かれています。
第一種低層住居専用地域
低層住宅の良好な住環境を守るための地域です。新築や中古の一戸建てのある用途地域は、第一種低層住居専用地域が多いです。10mまたは12mの絶対高さ制限があり、1~3階建ての一戸建て中心の環境です。
一定規模以下の住宅兼用の店舗や事務所、幼稚園や小中学校、高等学校は建てられますが、大学や専門学校などは規制されます。コンビニも建てられません。
第二種低層住居専用地域
主に低層住宅の良好な環境を守るための地域です。第一種低層住居専用地域と規制は同じですが、違いはコンビニなど150㎡以内の一定の店舗や、飲食店などの建築ができることです。
第一種中高層住居専用地域
中高層住宅の良好な住環境を守るための地域です。建物の高さ制限がなく、マンションと一戸建てが混在しています。大学や病院、500㎡以内の店舗、飲食店が建てられるので、生活利便性があります。
第二種中高層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域に加えて、2階以下の1,500㎡以内の一定の店舗や、飲食店などが建てられます。第一種よりも広い店舗や飲食店、オフィスの建築が可能で、ガソリンスタンドも建てられます。
住居専用地域なので、カラオケ店やパチンコ店などは建てられません。
第一種住居地域
中高層住居専用地域よりも制限のゆるい、住環境を保護するための地域です。3,000㎡までの一定の店舗・事務所、ホテル、ボウリング場、環境への影響の少ない小規模な工場も建てられます。
第二種住居地域
10,000㎡までの一定条件の店舗、事務所やホテル、マージャン店、パチンコ店、カラオケボックス、環境への影響が少ない小規模な工場が建てられます。アパートやマンションも多く見受けられる地域です。
準住居地域
道路の沿道に、自動車関連施設などと調和した住居の環境を保護するための地域です。第二種住居地域に加えて、営業用の倉庫、小規模な映画館、小劇場なども建てられます。
田園住居地域
農地と市街地の共存を図るために設定された住居地域です。低層の住居や農業用の施設(直販所、飲食店、貯蔵倉庫など)に限定して建築が可能です。
建物の高さは低層住居専用地域と同じく、10mまたは12mの高さ制限があります。
近隣商業地域
近隣の住民が、日用品や食料品等を購入できるように設けられた地域です。住宅としては、高層マンションが建ち並ぶエリアです。
生活の利便性は高いですが、大きな映画館やパチンコ店も建てられます。延べ床面積の制限がないので、場合によっては中規模以上の建物が建ちます。
商業地域
商業などの利便性の増進を図る地域で、市街地の中心部です。ナイトクラブ、ダンスホールなども建てられる繁華街です。住居に関する規制はなく、高層ビルやオフィスビルも建てられます。地価が高く、物件も高価です。
準工業地域
環境悪化の恐れのない工場が建てられます。工場以外にも、住宅や店舗も混在している地域です。
工業地域
危険性や環境悪化の恐れもある工場や、大量の危険物を扱う貯蔵施設も建築できます。学校や病院は建てられませんが、住宅や店舗は建てることができます。
工業専用地域
工業地域よりも更に工業に特化した地域で、どんな工場でも建てられます。この地域に住宅は建てられません。
不利益になる事項、誤解の生じやすい事項の表示
セットバックが必要な土地
建築基準法では、幅4mに満たない道は道路と認められません。しかし古くからの住宅地では、特定行政庁(自治体)が指定した場合、幅4mに満たない道も道路としてみなされ、建物が建っています。
再建築をする場合は、幅4mの道路に建物の敷地を2m以上接道しなければ建築できないため、道路の中心線から2mを確保できる部分を購入した土地から道路として提供する必要があります。この部分をセットバックと呼びます。
このような必要がある土地の場合、セットバックする旨を表示しなければなりません。セットバックする面積が土地面積の10%を越える場合は、その面積も表示します。
古家が建っている土地
土地として売っている場合、古家があると更地にするために古家を解体する費用がかかります。このことを消費者に伝えるために「古家有」の記載をします。
建築条件付きの土地
建築条件付き土地とは、一般的な建築条件のない土地と違い、家を建てる建築会社があらかじめ決められている土地のことです。
売主か、売主の指定したハウスメーカーなどの建築業者との間に、一定期間内(通常3ヶ月以内)に買主と建物の建築請負契約を締結することが決められていて、自分の好きなハウスメーカーを選ぶことはできません。
(この土地は、土地売買契約後3か月以内に売主と住宅の建築請負契約を締結することにより販売されます。この期間内に建築請負契約を締結されなかった場合は、土地売買契約は白紙となり、受領した手付金などの土地代金はすべてお返しします)
市街化調整区域の土地
市街化調整区域は建物を建てることを原則として認められていないので、市街化調整区域にある土地はその旨を表示します(例外として建てられる場合もあります)。
路地状部分を含む土地
敷地まで行く間に道路から細長い路地を通って行くような、土地の路地状部分が土地面積の30%以上ある場合は、路地状部分を含む旨および路地状部分の割合、または面積を表示します。
傾斜地を含む土地
土地面積に含まれる傾斜地の割合が30%以上ある場合は、その旨と傾斜地の割合、または面積が表示されます。傾斜地によって、土地全体が有効に利用できない場合があるためです(マンション・別荘地を除く)。
高圧線下の物件
土地の上を高圧線が通っている場合は、建物やその他の工作物(物置など)の設置が制限または禁止されていることが通例なので、高圧線下の土地である旨、およびその制限が及ぶ範囲の面積を表示します。
地上権が設定されている物件
地下を地下鉄が通っている場合で、土地の全部または一部の地下の範囲を定めた地上権が設定されている場合は、その旨が表示されます。
不整形地
不整形地とは段差のある土地、三角形の土地など、土地の有効利用が著しく制限を受ける土地で、その旨が言葉で表しづらい時は区画図を載せて表示されます。
例2:売地160㎡(地形:ほぼ二等辺三角形)
中古住宅・マンションのリフォーム状況
リフォームを表記する場合は、時期と内容が表示されます。
まとめ
不動産広告の見方がわかると、家探しはぐっと進めやすくなります。
しかし、実際の物件広告には今回ご紹介したような情報が複雑に絡み合っていることも多く、
「これはどういう意味だろう?」
「私たちの場合はどう考えればいい?」
と、個別に気になる点も出てくるはずです。
そんな時は、どうぞお気軽に朝日土地建物の店舗までお越しください。実際の物件広告を見ながら、ご希望やご不安に合わせて丁寧にご説明いたします。インターネットだけでは見えにくい「広告の背景」や「現地とのギャップ」なども、プロの視点でしっかりサポートいたします。
「まだ買う気はないんだけど…」という方も、ご相談だけでも大歓迎です。家探しをしているあなたにとって、訪れて良かったと思える時間を提供いたします。
皆様のご来店を、心よりお待ちしております。