「家を買うならやっぱり新築がいいかな? それとも中古で大丈夫?」…そんな疑問をお持ちの方はいらっしゃいますか?
日本では、住宅を購入する際に「新築」を選ぶ方が欧米よりも多いです。中古住宅市場が発達している欧米とは異なり、日本では新築住宅の購入が「当たり前」のように考えられているのが特徴です。では、なぜ日本人は新築を好むのでしょうか。
その背景には、文化的な要因や市場の仕組み、中古住宅に対するリスク、税制や制度の影響などがあり、複雑に絡み合っています。
神道の「清浄志向」と新築志向の関係
日本には「清らかであることが良い」という価値観が根付いています。これは、神道における「穢れを避け、常に清らかであるべき」という考え方と深く関係しています。神道では、「建物を新しくすること」が重要だと考えられているのです。
- 伊勢神宮の式年遷宮:20年ごとに神殿を修繕、または新しく建て替える伝統があります。
- 地鎮祭・お祓いの習慣:家を建てる際に「清める」儀式が行われます。
- 中古住宅に対する心理的抵抗:「前の住人の気」が残っていることを気にする方もいます。
こうした日本独特の「清浄志向」が、新築信仰の根底にあると考えられます。欧米では「古い家ほど価値がある」とされるのに対して、日本では「新築のほうが清らかで良いもの」という意識が強いのです。
戦後の市場構造が生んだ「新築信仰」
神道的な価値観だけではなく、日本の住宅市場の仕組みも「新築が好まれる」理由を作り出してきました。
- 高度経済成長期の大量供給と「家は新築で買うもの」意識の定着
日本では、戦後の高度経済成長期に都市部の住宅不足を解消するため、「質より量」を重視して新築住宅が大量に供給されました。この時期に「新築こそが理想のマイホーム」という価値観が広まり、世代を超えて受け継がれました。
- 未成熟な中古住宅市場
欧米では、中古住宅の価値が保たれるように、リノベーションやメンテナンスの履歴管理がしっかりと行われています。しかし日本では買っても長く住めないとして、中古住宅の評価が低く、多くの方が「どうせなら新築を買ったほうがいい」と考える傾向にあります。
- デベロッパーと住宅メーカーの広告戦略
大手ハウスメーカーは新築住宅の魅力を前面に押し出し、「新築こそが高品質で快適で安全」とアピールし続けてきました。こうした広告の影響も、日本人の「新築信仰」を強化しています。
シロアリ・雨漏りなどのリスク
中古の戸建て住宅には、新築にはないリスクもあります。
- シロアリ被害
日本の木造住宅は、築5年以上経つとシロアリ被害の可能性が出てきます。特に床下の換気が悪い家や湿気が多い地域では、注意が必要です。ただし、定期的なメンテナンスがされていれば問題がないことも多いです。
- 雨漏り・屋根の劣化
築10~20年経った家では、屋根の防水シートや外壁のコーキングが劣化し、雨漏りのリスクが高まります。中古住宅の購入時にしっかり調査をしないと、後から修繕費がかかるケースがあります。
- 低い耐震性能
高い耐震性能を備える新築住宅に比べて、多くの中古住宅の耐震性能は低めです。築年数が経った中古住宅の中には、現行の耐震基準を大きく下回るものもあります。 - 給排水管の老朽化
中古住宅では、水道管や排水管の劣化にも注意が必要です。特に築30年以上の住宅では、給排水管の交換が必要になることがあります。
こうした「中古住宅特有のリスク」を考えると、「最初からリスクの少ない新築を選びたい」と考える方が多いのも納得できます。
「新築のほうが得」な税制・制度
日本の税制や住宅ローン制度も「新築を買うほうが有利」と思わせる仕組みになっています。
- 新築住宅の固定資産税軽減:購入後 3~5年間は税額が軽減されます。
- 住宅ローン減税:新築のほうが優遇措置を受けやすいです。
- 建築基準法の改正:新耐震基準などの影響で「古い家=危険」というイメージが定着しているため、新耐震基準で建てられた新築なら安心度が高まります。
このように制度的にも「新築を買うメリット」を強調する仕組みになっているため、多くの方が「中古より新築のほうがいい」と考えやすいのです。
これからの時代、新築信仰は変わるのか?
しかし日本の「新築信仰」は、今後少しずつ変化していく可能性があります。
- 「大相続時代」の到来で、中古住宅の流通が増える
今後日本では、相続によって大量の住宅が市場に供給されます。少子高齢化・社会保障費の増大に伴い、「新築を建てるよりも、今ある家を活用する」という選択をする方が増えていく可能性があります。
- リノベーション・リフォーム市場の拡大
最近では、中古住宅をリノベーションして活用する方も増えています。「新築では手が届かないエリアで、リノベーションした中古を買う」という選択肢も一般的になりつつあります。
- 環境意識の変化
SDGsや脱炭素の観点からも、「新築を建て続けるのはサステナブルではない」という意識が高まりつつあります。特に都市部では、「古い建物を活かして住む」というスタイルが今後のトレンドになっていくかもしれません。
まとめ:「新築信仰」は文化・市場・リスク・制度の複合要因で生まれた
日本人が新築を好む理由は、単なる「新しいもの好き」ではなく、神道的な価値観、高度経済成長期の住宅市場の構造、中古住宅のリスク、税制・制度の影響が絡み合った結果です。
しかし、時代は変わりつつあります。
「新築じゃなきゃダメ」という時代から、「良い中古を活用する」時代へ。
これから住宅購入を考える方は「新築 or 中古」という単純な選択ではなく、住まいを選ぶ上で何を重視するか様々な角度から検討し、見極めることが大切になっていくでしょう。
新築に住みたい方も、中古を活用して住みたい方も、ぜひ朝日土地建物にご相談ください。当社にはアサヒ・デザインという、注文住宅・リフォームを専門にする関連会社もあります。
理想の住まいを、一緒に実現していきましょう。